| Q1. EA試験にチャレンジしようと思われた理由やきっかけは? |
日本の税務を10年経験した後、キャリアを広げるべくUS税務も学習したいと思ったため。
また、勉強を始めてからBIG4税理士法人のUS税務の部署への採用が決まり、米国税務の知識が必須となったため。
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| Q2 学習開始時の英語力・会計知識は? |
会計知識:税理士試験(簿記論・財務諸表論合格)
税務知識:税理士試験(所得税・法人税・消費税・相続税合格)、法人税務実務(主に消費税法人税)10年
英語知識:TOEIC® L&R Test:970点 |
| Q3. TACをお選びいただいた理由は? |
TAC税理士講座でお世話になったため。
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| Q4. TACの講座でよかったところ(講師、教材、カリキュラムなど) |
自己で解決できない疑問があった際に、TAC WEB SCHOOLの学習サポートから講師に質問し、丁寧に回答してくれたところ。
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| Q5.合格までの学習期間・学習情報 |
・受講コース :EA本科生
・学習期間 :5ヵ月
・総合学習時間:740時間
・各科目の学習時間:
Part1:320時間、Part2:300時間、Part3:120時間
・GleimのOnline演習問題解いた数:
Part1:3,580問、Part2:4,197問、Part3:1,365問
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| Q6. 合格までの学習法(全般的なこと/科目別) |
米国の税法は英語で勉強したかったため、BeckerのEA講座を受講し、講義のビデオについてはすべて英語で視聴した。
学習時間の半分はBeckerのビデオ視聴と問題演習、あと半分はGleimのOnline演習に使った。
当初はビデオで理解して、Gleimの演習を解くサイクルでうまくいくと思ったが、ビデオをみてから演習問題を解いても分からないことが多く、演習問題を解いていく中で、何が問われているのかや、何の理解が足りないのかはっきりすることがあったため、論点の理解が不十分でもGleimの演習に進んで、自分の理解を試し、理解が足りないところについてビデオに戻って理解するということで、論点の理解の穴をふさいでいった。
理解が十分でないまま、Gleimの演習をすることはストレスフルなので(正答率が50-70%で、できた気がしないし、Performance StatsのStudy Sessionに成績がよくない記録として残ってしまう)、理解が完璧でなくても、問題の演習を進める強いハートが必要。
試験までには、Gleimの演習はすべて2周以上し、最終的にはCumulative Scoreは、どのStudy Unitでも、すべて青色(黄色がないように)になるまで復習した。
今後、EAの受験をされる方は新年度すぐの受験を避けることをお勧めする。
税制新年度すぐの試験では、『2025年6月のテストは、2024年の税制となってから1回目の試験』である(2025年6月以前のテストは2023年の税制が出題)が、教材が2024年版に切り替わるのが、Beckerでは2025年3月中旬、Gleimでは4月になってからということで、学習の半分程度を前年試験内容の2023年税制の内容でする必要があった。
また、AI(Copilot有償版)にも逐一確認を行うものの、US税務についての、AIの精度や理解は低い(50%程度は間違った情報をだしてくる)ため、間違っていると思われる情報については、バックアップ情報として必ずIRS Publicationに当たるようにした。
試験の具体的な点数は公表されないものの、各カテゴリーの結果は以下の通りだった。
Part1
・Preliminary Work and Taxpayer Data:2
・Income and Assets:3
・Deductions and Credits:3
・Taxation:3
・Advising the Individual Taxpayer:3
・Specialized Returns for Individuals:2
Part2
・Business Entities and Considerations:3
・Business Tax Preparation:3
・Specialized Returns and Taxpayers:3
Part3
・Practices and Procedures:3
・Representation before the IRS:2
・Specific Areas of Representation:2
・Filing Process:2
・Level 1: Weak. You may want to consider taking a continuing education course in this area.
・Level 2: Acceptable. You may want to review this area.
・Level 3: Strong. You clearly demonstrated an understanding of this subject area.
Part1は個人(Individuals)に関連する税制だが、日本の所得税、相続税、贈与税とはかなり違う印象を受けた。日本の所得税では10種類の所得区分が大事(利子、配当、不動産、事業、給与所得、etc)だが、こういった所得区分はなく、Ordinary IncomeとCapital Gainの2種類だけ。
このことから、日本の所得税の国内源泉所得の所得区分ごとの源泉税(不動産賃貸・組合配当・賞金等20.42%、上場株式等の配当等:15.315%、etc)の暗記は不要というのはありがたく、国内源泉所得の源泉税率は一律30%とCapital Gainの複数税率を覚えるくらいでよい。
所得控除を使いたいなら、Itemized Deductionsの選択が求められる(Standard Deductionを選択すると個別の控除が使えない)点と、ビジネス関連でない税額控除(Child Tax Credit etc)がたくさんあるという点も所得税と異なり、覚えるのに時間を要した。
納税者の死亡に関連する論点もかなり問われ、例えば、納税者が死後に受け取る給与、配当等について、被相続人の最期年度の所得税の課税対象となるべきか、相続人等の所得として課税されるべきか、また、課税対象となる場合の課税体系や申告期限、そして、これらが相続財産に含まれるべきかどうかが問われる。税理士試験は、科目別試験であり所得税と相続税を同時に問われることがなかったため、この切り口からの論点は、理解が難しかった。
また、米国では、被相続人死亡後に、EstateまたはTrustに相続財産の全部または一部が移管され、そこから相続人に分配するという形式を取るため、EstateとTrustの課税体系(Trustの区分、所得計算、分配可能額の計算等)がややこしい(これはおもにPart2の論点)。これも日本の税理士試験ではでてこない論点である(実務としてはありえると思う)。
贈与税については、贈与した側が支払うというのも、日本の贈与税とは違う点であるし、贈与税と相続税で共通の生涯控除額(unified lifetime exemption)を使うため、贈与した場合と相続した場合で、それ自体の有利不利はなく、クレバーな税制と思われる。
日本では贈与税が高くなる傾向があることから、生前贈与は損という意識があり、それにより財産が若手世代へ移動するのを妨げているのでは、とまで考えさせられた。
Qualified Business Deduction(QBD)とAlternative Minimum Tax (AMT)も、日本の所得税にはない論点であり、実務上も大事な論点と思われるため、重点的に学習を行った。試験では、QBDの出題があったが、AMTは出題がなく残念だった。
Individual Retirement Arrangement(IRA)は、EAの勉強前には聞いたことなかったが、iDeCoやDC(確定拠出年金)のようなものと考えれば、すぐに納得・理解できる。
Like-Kind Property exchangeは圧縮記帳のようなものと理解した。仕訳を書いて、金額を追っていけば正解できる。
以上の通り、日本の所得税知識がほぼ役に立たないという理由から、US個人税務の実務の経験がない受験生(日本で受験する方すべてに当てはまると思われる)が、Part1のすべてのカテゴリーでLevel3を取るのは不可能と考えられる。
Part2については、Businessesの所得ということで、法人、パートナーシップ、非営利団体の所得についての論点がメイン。
日本の税理士として法人の申告に約10年たずさわっていたため、違和感なく学習が進められたし、結果もよかった。
Part1から引き続いて、ビジネスをしている個人の所得税や死亡関連の論点も出題される。これについては、私はPart1とPart2を同時に学習を進めていたこともあって対応はできたが、時間的制約などからPart1→Part2と順番に学習を進める方が多いと思うので、その場合はPart1をより時間をかけて学習することがよいと思われる。
Part1をしっかり学習できていれば、Part2は、Part1の延長・おまけという感覚でいいと思う(いいかえればPart2学習時に、Part1の内容を忘れてしまっていてはダメ)。
Part2おまけ部分の大半は、法人・パートナーシップへの出資と出資の返還や分配や配当を受けた場合の取り扱いとなるが、パターンが決まっているため、仕訳を書いて、練習をつめば問題ない。
Farming businessの論点は、日本の税制にはない論点(一部、所得税の変動所得の平均課税に近い論点はあるが)で、最初はちょっとみがまえるものの、試験対策という意味では、qualified farmerとなる要件(3分の2以上がfarming income)とqualified farmerとなった場合はMarch 1までに申告・納付をしてよいという特例だけ、覚えておけば十分と思われる。
Part3は、税理士試験の国税徴収法+(税理士試験にはない)倫理的・実務的な内容で構成されている印象。実務家の自分としては楽しめたPartだった。
手続き規定を学習していくわけだが、かなり細かいのですべてを理解するのは不可能と思っていい。
とくに税務調査等で、納税者とIRSのどちらかが納得せず裁判所(court)行きとなった場合の手続き規定は、法律(Legal)の話であり、税務ではないことから、正確に理解できなかった印象。
税務実務的なところでは、税務代理、更生の請求、修正申告、納税猶予・執行、電子申告、帳簿の保存が出題される。Part3についてもUS税務の実務の経験がない受験生(日本で受験する方すべてに当てはまると思われる)が、すべてのカテゴリーでLevel3を取るのは不可能と考えられる。
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| Q7. 受験手続・受験時のエピソードなど |
東京お茶の水のプロメトリック:
予約した時間前でも試験を始められる。試験予定時間より30分以上早く着いたPartもあったが、テストセンターについたタイミングで試験を始めるようにした。
私は早く受験を終わらせたかったので、早く始めてよかったと思う。
ただ、試験を受けてみて、広く復習した分だけ解答を拾いやすい試験という実感を得たので、予定時間のぎりぎりに入出する、ぎりぎりまで待合室等でテキスト等みなおして復習することも有効だと思う。
試験前日の過ごし方:
見切れていない論点や忘れている論点があるといやなので、範囲が広いPart2の前日は夜中の2時まで復習をした。その結果、試験中の疲労、空腹や眠気あったものの、Part2のすべての単元で、最高のLevel3を獲得した。このことから、EA試験は、追い込みがきくと思うので、前日まであきらめずに勉強するのがいいと思った。
試験当日①:Part1とPart2のテストに、ちょいちょいPart3の内容がでてきて、ダミー問題(採点されない問題)だとは知っていたものの、自分はPart1-3を同時に勉強していたため、正解することができてうれしかった。
試験当日②:Part1-3について、それぞれ1時間―1時間30分程度で終わったので時間内で試験会場から退出した。
BeckerのSimulation Examでは、試験時間の210分が、休憩前105分と休憩後105分で分割されており、休憩前のセッションが早く終わっても、後半は固定の105分となっていたが、実際のテストでは全体で210分が確保されているので、例えば休憩前のセッションで60分使ったら、休憩後のセッションでは150分使える。したがって、試験では時間配分の心配や時間が足りなくなる心配はなかった。
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| Q8. 勉強したことが仕事に役立っていることは
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2025年6月からBIG4税理士法人のUS税務部署へ所属となり、今後USの申告書を作成する業務に携わることとなり、EAの学習は業務に役に立つと考えられる。
一方で、申告書の作成の仕方という実務的なところおよび州税については、EA試験でカバーされていなかったため、自分で別のマテリアルを見つけて継続学習をしている。
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| Q9. これから合格を目指す方へのアドバイス |
EA試験で得られる知識と現在の仕事に関連性がない場合は、EA試験合格までのモチベーションが保てないと思うので、勉強を始める前(=講座申込前)に、EAの合格の有用性が十分あり、職場からも評価・理解が得られることを確信できる点を確認いただくのがよいと考える。
EAに合格したのに使うところがない、または、もっとEAが使える職場に転職したいという方は、私のEA試験の経験やUS税務の部署の経験でよければお話しできると思うので、ぜひご連絡いただきたい。
⇒小野さんへのお問い合わせは【ea-info@tac-school.co.jp】までご連絡ください。 |